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デザ引力

さあ、お立会いお立会い、パースや建築デザインでお困りの方はぜひぜひ、ごらんください。デザ引力で、目からうろこのアイディアをお届けします。お気に召さねば、お代金は一切いただきません。どうぞ、お試しあれ!
理想のキッチンとは、使わないこと。


アイランドキッチン


 一昔前のことだ。大判の建築雑誌のグラビアを見ながら、そのあか抜けたインテリアの風景に、いいねえと言いながら、うっとりと見入る母が、もっとも感動したシーンがある。
 
その掲載の写真と記事は――― 。
 統一したステンレス製の調理器や整然と片付いたテーブルがまばゆく光り、シンプルに美しく整えられたアイランド型のキッチン。その写真の中の人物、
清潔を絵に描くような、白いワイシャツ姿のオーナーに、きれいなキッチンの秘訣を問うている。

『使わないことです』と彼は答える。

この答えに、ぼくの母は真面目顔で「なるほどねえ!」としきりに相づちを打っていた。
使わなければ、いつもぴっかぴっかのキッチンである訳だ。その分外食費がかさむだろうが…。

「キッチンなんて、料理をするためにあるのに、使わないキッチンが良いなんて考えられん」とぼくが言うと、母は「女でないとわからんことだ」と一蹴された。

 当時83歳になる母は5年前に夫を亡くし、一人暮らしであったが、その住まいには友人が行き交い始終賑やかだった。住まいはいつもきちんと掃除が行き届き、ここだけは空気が違うのではと思う程清々しくあった。
 だが、そんな部屋から伺えるほど、母はきれい好きではなかったのだ。いや、それ以上に彼女は日常の掃除や片付けを疎ましく思っていたにちがいない。何故なら…、
 商家の出自でお嬢さん育ちの母は料理は他人任せで、フルーツが好物なのに、自分で剥くのが面倒くさく、そばにあっても食べずに我慢するほど無精者だから、掃除や片付けが好きなわけがない。おそらく、みっともない格好は見せられないと言う大正生まれの女性の気概が、一種の強迫観念になって、毎日の掃除や片付けに駆り立てたのではなかろうか。
 それは皮肉にも、他人に常にきれいで楽しいインテリアを見せる演出になった。

『キッチンをいつもきれいに保つには、使わないことだ』、この答えは最初、冗談に決まってる、高価なシステムキッチンに対する諧謔さ、と思ってたぼくは、母が亡くなって8年過ぎた今、使わないキッチンとは、あながち,間違いでもなく、そんなライフスタイルもあるのではと、いや、もしかすると女性の理想のキッチンではと思うようになってきた。

■関連ウエブサイト

「パースはカンで描きまする!」http://www.atelier-k-plus.com/
「パース110番」 http://www.pers110.jp/
「パース考」 http://pers.exblog.jp/
「デザ引力」 http://design110.blog58.fc2.com/
「泉デザイン研究所」 http://www.izumi.net/

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2011.09.08.Thu 02:05 | ティ ブレイク | trackback(0) | comment(0)
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