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デザ引力

さあ、お立会いお立会い、パースや建築デザインでお困りの方はぜひぜひ、ごらんください。デザ引力で、目からうろこのアイディアをお届けします。お気に召さねば、お代金は一切いただきません。どうぞ、お試しあれ!
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 ぼっ、石油ストーブに点火すると足下がオレンジ色に染まった。自分の部屋にやっとたどり着いた安堵感が、部屋に伝わる暖かさとともに、次第に甦って来た。
 
 ここは東京、世田谷に在る某カフェの2fの喫茶室である。カフェは住宅街の奥まったところに在って、それから、20mほどの木立のアプローチを抜けてたどり着くから、知らない人が案内なしで立ち寄れる場所ではない。
 間口4m、2階建て木造の家屋は、おそらく戦後、昭和25年頃に建てられたものだろう、こんな安普請の造作で半世紀よくぞ生き延びたものよと感心させられる。ファサードの格子組でガラスの入る引き違い戸はどこにでもある普通の家の玄関口である。ファサードと言うカタカナ語はここには似つかわしくない。その形容が思いつかないほど、普通の、ごく普通の、目立たないボロ家である。
 壁にはカフェの店名が手描きで書かれたA3ほどの看板が吊るされている。
 1階はコーヒーの焙煎室とコーヒー豆の売店、2階の喫茶室は外階段から入る。

 喫茶室は約4坪ほど、奥行き3mと4.5mの部屋である。中央の3角形のテーブルの2辺に4席、壁側のテーブルに向けて座るのが4席である。ぼくが朝一番の客に違いない、ひんやりとした室内と、オーナーがストーブに火を点けた様子は何とも言えない、新鮮で気分のいいもてなしだった。

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 室内の作りは、天井、壁はベニヤ板にペイント仕上げ、一部分は漆喰のスタッコ仕上げで、床は杉材のフローリング(古板張りと言う方が相応しい)、外観通りのぼろい仕上げである。(客商売の室内で、これほど貧相な造作の家屋にお目にかかることの方が珍しいのでは…)
 ステン染色塗料で仕上げられたテーブルはマット仕上げなのに、年期の入った拭き掃除のおかげか、黒光りしている。椅子はありふれた事務椅子であろうが、なじみよく、おそらく、座り心地で選び抜かれたのだろう、それぞれに異なる。膝掛けのためのブランケットが椅子の背に掛けられている。読書のためのライトスタンドも使い古されたものであるが、ここでは、何故か普段よりも、明るく暖かく感じられる。

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 贅沢な什器や調度品は何一つない。それでいて、自分のために、整えられた空間のようで、うれしくなってくる。
 テーブルの上や書棚の本は、「すでに読まれた本」だ。だから、一つ一つが選び抜かれた本となって、その信頼や楽しさでぼくらをいっそう魅了する。
 映画、小説、写真、芸術、他多様な書籍を、和書から洋書、雑誌、カードにしてランダムに置いてある。新刊書より古書が多い。それぞれに意味があり、何がしかの感動を与えた本だ。知性を衒った、ディスプレイのための書籍ではないのだ。
 ここにある置物はオーナーのコレクションであろうが、客の寄贈するものもあろう。誰かに読んでもらいたい、見てもらいたいとそんな気にさせるような雰囲気がある。
 BGMが流れていた。いままで、全く気付かずにいたのが不思議だ。おそらく、思考を妨げない、音量と選曲のなせる技だ。サイモン&ガーファンクルの曲で、美しく優しいヴォーカルの響きが流れていた。唯一、オーナーの思いのような気がした。

 この居心地の良さはどこからやってくるのだろう。

 インテリアで、気障にならない雰囲気を演出するのは至難の業である。
 手を抜くと、軽くてお粗末、貧相な感じになるし、手を加えすぎると、臭くて、偽物,てらいが神経を逆なでる。アンティークとか、古民家風とかのインテリア・デザインに時々、感じる居心地の悪さはこの類である。

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 ここは自分の部屋で、自分の書斎である。そして、みんなのリビングである。ここは、ぼくらに、つくろわず、媚びず、押し付けず、まったく自然のままにある。オーナーはおそらく、「ぼくらのため」にこの部屋を造ったのではなく、「自分のために」造ったのだろう。自分が一番くつろげる部屋を考え、好きな本や、好きな絵や好きな家具や、座り心地の良い椅子を選んで、ここで過ごしたいと思ったのだ。
そして、ぼくらはオーナーのセンスや趣味性が心地よくて、いつの間にか、ここに集ったのだろう。

 いいインテリアを造るには他人におもねず、自由に自然に、自分の思うままにデザインする方が、依頼主にも、そこに訪れるお客にもいい雰囲気を造るようだ。もちろん、そのデザイナーのセンスに共感しての話だけど。
 しかし、デザイナーは、依頼主の好みやイメージに合わせた、多様なスタイルを提案するのもプロとしての役割だ。
 とすると、他人に見られることを意識せずに「自分の好きな部屋」を造る機会は人生にそう沢山あるわけではない。
 そんな機会が訪れたら、思い切り、自分の好きなコレクションを集め、好きな造作やレイアウトでデザインしよう。

 お客が現れた。中年の男性一人、ぼくとお互い会釈をして、左の壁向きの席をとった。彼は、粋なツートンカラーの皮革のショルダーバックから、本を取り出して読書を始めた。

 客にコーヒーを持ってきたウエイトレスに、ぼくはコーヒーのお代わりとシフォンケーキを注文した。

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窓の外を見やると、
快晴の空に葉一つない冬枯れの木立が一本凛として立っていた。

2010/1/23




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